【Event Report】「バーチャル・ステーション」はリアルもVRも一体化 C108でのJR西日本グループの挑戦

 2026年8月15日、16日の2日間、東京都江東区の展示会場「東京ビッグサイト」にて、全館を使っての大規模な同人即売会イベント「コミックマーケット108」が開催された。今回は多数の企業も2日間通しで参戦をしているが、その中で一つ毛色の違うブースが見受けられた。それがJR西日本グループの提示している「バーチャル・ステーション」である。

 この「バーチャル・ステーション」は昨年の夏に開催された「コミックマーケット106」でも出展を果たしており、西日本旅客鉄道株式会社が手掛けている「バーチャル大阪駅 4.u(フォーユー)」に根ざした展示ブースとなっていた。

 だが装いも新たにブースを設営した今回のコミックマーケットでは、同グループが予期していなかったレベルで参加者が詰めかける大人気コンテンツとなっていた。今回の記事では実際の会場の様子や担当者へのインタビューも交えながら、その様相について追いかけてみる。

バーチャル・ステーションで「検札」を味わえる楽しみ

 今回展示されていた「バーチャル・ステーション」のブースは、昨年よりもその面積を拡大しての展示となっている。新たに物販専用のスペースが設けられ、さらには同社が取り組んできたVR関連の出来事をまとめた年表や記念撮影スポットなども設営。「昨年よりも大幅に、物販に力を入れているんですよ」とは担当者の弁である。

 記念撮影スポットでは、VR対応オンラインSNS「VRChat」から、同社のキャラクターである「4.u子(ふぉーゆーこ)」と、VRChat内アバターである「まめひなた」が駅員の制服を着て参加しており、いわば仮想空間上のマスコットとリアルタイムでの記念撮影が出来るというものになっている。

マイクで向こうの二人にもある程度コミュニケーションが取れる。実際わちゃわちゃしてました

 そんな中で今回特に大きく注目を浴びたのは、会場内で手渡される切符タイプのノベルティだ。バーチャル大阪駅、バーチャル広島駅で切符の色が違っており、そばにいる駅長が「切符を切ってくれる」サービスが受けられる。これも印字サービスなどではなくきっちりと切符を切ってくれるもので、切符を知っている人も知らない人も嬉しい内容となっていた。切符上のQRコードを読み込むと、各バーチャル・ステーションのそれぞれの案内が表示されるというギミックも搭載されている。

 実際、紙製の切符は年々購入数が落ちているのが現状だ。利用者の大半はICカード、もしくはクレジットカードの使用へ移行しているこの状況で、鉄道事業として切符に需要はあるのかという点を展示担当者である駅長の方に話を伺った。すると、次のような回答をいただけた。

「実際に今でも切符という媒体は売られていますし、愛好家向けの物もありますよね。利便性に優れるICカードやQRコードといったサービスが現状ありますが、それでも切符を販売し続けているのはひとえに『鉄道会社として必要なもの』だからです。鉄道会社として必要な『アイテム』として我々は認識しているし、大事にしています。だからこそ、切符に価値を感じて購入されたり、イベントに伴う特別な切符をご購入頂く事は多いです。今回のコミックマーケットでも、皆さん切符を貰っていきますし、その切符を『切られる事』を希望しています。鉄道会社として『やってきた事』を好きでいてくれる人がいる限り、少数であっても需要は途切れません。そういう事なんだと思いますね」

―切符を切るという行為は、現在においては必ずしも必須ではないにせよ「電車に乗るための儀式」のような位置付けの行為になるのでしょうか?

「それに伴う需要はあると思います。皆さん、切符が大好きなんですよ」

VRとリアルを繋ぐバーチャル・ステーション

 今回のコミックマーケットに先立って、VRChat上で展開しているバーチャル・ステーションである「バーチャル広島駅 2.u(トゥーユー)」では大規模なアップデートが実施。これまで工事中であった南北自由通路を実装し、ワールド全体を幅広く拡張した。これまで公開されていたガウシアンスプラッティングによるワールドも、在来線コンコースとホームという形でワールド深部に向かえば訪れる事が出来る配置に。

バーチャル広島駅2.u

 このアップデートについても、担当者いわく「狙ってやりました」とのことである。そのうえで、今回のコミックマーケットの出展も含めて「スキームが出来ている」との回答を頂いた。

「バーチャル・ステーションはREALITY側で配信中心のバーチャル大阪駅、そしてVRChat側で交流中心のバーチャル広島駅と二箇所用意していますが、これはあくまで『JRとしては、プラットフォームでIPを活用する』というスタンスとスキームを崩していないからこそ出来ています。リアルのイベントであればリアルに顔を出しますし、バーチャルのイベントであればバーチャルに顔を出す。そして今回はリアルのコミックマーケットという場で、そこに合わせたスタイルをより突き詰めたからこそ、ここまでの事が出来るようになりました」

 VRChatの有料アイテムとして、VRChat上で展開できるバーチャル・ステーション由来のアイテムパックが販売されており、特に唯一性の強いゲートポータルはそのアイコニックさも相まって人気が高い要素となっている。JR西日本グループでは、現在バーチャル・ステーションも含めて今後の集客の推移を見守るとしており、コンテンツの更なる拡張も考慮に入れているとのことだ。今後も同企業の取り組みに対して熱い視線が注がれている。

変わりつつある切符の形態

 ここからは完全に余談だが、切符自体についても面白い変化が起きている。実際のところ、現在でも券売機で切符は変わらず発売されている。そのうえで切符は時代に応じて、新しい形へと変化を遂げつつある状況だ。というのも、最近ではこのバーチャル・ステーションのブースで見られるような、QRコードを活用した事例が存在しているのである。

 一部の鉄道事業者では自動改札機とQRコードリーダーと組み合わせることで、切符に印字されたQRコードで改札機の入退場を制御するシステムを開発。これで切符を投入せずとも、改札の入退場を管理出来る新しい取り組みをスタートさせている。この場合切符はお持ち帰りする形となる。その結果、以前のように券売機から切符の残骸を取り出す手間とコストが減ると共に、改札機の小型化や省スペース化も可能となる。

ゆりかもめ 東京ビッグサイト駅の様子。全線でQRリーダー対応改札が設置済み(画像:ゆりかもめ)
ゆりかもめ 東京ビッグサイト駅の様子。全線でQRリーダー対応改札が設置済み(画像:ゆりかもめ)

 これは少々穿った見方ではあるが、切符を文字通り「乗車の記念品」として持っていける事になるシステムだ。今後はこれまでのような切符を切ったり、自動改札機に通すといった処理とはまた別のフェーズが定着する段階と言ってもいいだろう。

 経済産業省発行の「経済産業省生産動態統計」を参照すると、定量的に自動改札機の更新が行われていることが確認できる。今年も月によって300台~500台前後とバラバラではあるが、平均すると1都道府県で一月6台から10台程の自動改札機の入れ替えが発生している。機種更新やメンテナンスのための入れ替えが主であろうが、当面ここを通過するデバイスが大きく変わるような案内は鉄道各社からはなされていない。今後もまだまだ自動改札機ないし、それに付随するサービスは現役のままだろう。

 年々落ちつつある紙需要、かつこれまでより利用頻度の落ちた媒体であるからといって、必ずしも撤退する事が正解ではない。いわゆる「アイコン」のような残し方をし続けることで人気を博す可能性はまだまだ残っている。そういった流れが今後も続いていくのだと思わせる、バーチャル・ステーションの混雑ぶりであった。

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