Electronic Artsが傘下の開発会社BioWareを閉鎖 ゲームの歴史にまた一つ終幕が訪れる事に

 2026年10月22日(日本時間)、カナダに拠点を置くゲーム開発会社であるBioWareが閉鎖を発表した。現状その後についての詳報は出ていないが、現在の主要株主であるElectronic Arts(エレクトロニック・アーツ)の判断であるという見方が有力視されている。

 本記事では同企業のソフトに焦点を当てつつ、この流れを俯瞰的に追いかけていく。

様々なブランドを世に残したメーカーの栄光と転落

 BioWareは1995年にメカ物一人称シューティングである「Shattered Steel」を世に送り出すところからスタートしている。いわゆる「BattleTech」シリーズに近しいこのタイトルは、技術デモとして展示され企業からの感心を引くことになる。

 同社の方向性を決定づけた要因の一つが、その後に出てきた初代「Baldur’s Gate」や、その後の「Neverwinter Nights」のようなテーブルトークRPGを下地にしたシミュレーションゲームだ。Baldur’s Gateは「ウルティマ」や「Diablo」の様なクオータービューによる見下ろしスタイルである。

 同作はアドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ第2版を再現したと評価され、その完成度の高さは同社の実力を確かなものとしたのである。Neverwinter Nightsは第3版の再現ではあるが、リアルタイムセッションによる実際のTRPGに近いゲームプレイを可能とした他、カメラアングルの変更にフル3Dモデル化など、当時の最先端を走るゲームであったと言えるだろう。

 その後、Electronic Artsにより同社は買収される。だがブランドは残され、人気のシューティングゲームシリーズMass Effectや、更に洗練された3DRPG作品であるDragon Ageシリーズなどを送り出す事になる。先行きは保証された様に思えるほどに、良質な作品がリリースされていったのだ。勝ったなガハハ風呂入ってくる

 だが転機が訪れたのは2010年代に入ってからである。2013年の「Dragon Age: Inquisition」発表後に、BioWareを立ち上げた代表メンバーのレイ・ミュジカとグレッグ・ゼスチャックが同社を離れる事になったのだ。その前年である2012年に発表された「Mass Effect 3」ではエンディングの評価を巡って訴訟まで発生する事態になっており、クオリティコントロールが上手く行っていなかった可能性は高い。

 BioWareはその後にEA Worldwide Studiosへと統合され、続作「Mass Effect: Andromeda」は想定よりも人気が振るわなかった事から同シリーズの開発は凍結される事となる。そして2019年にリリースされたのが、期待されていた新作「ANTHEM」であった。

 ANTHEMの開発は2012年からスタートし、2014年にティザームービーが公開されることとなった。しかしその後は開発が難航。その理由の一つが、EA傘下のDICEが開発した「Frostbite」というゲームエンジンを用いて制作されたことにある。同作はこの新しいゲームエンジンを開発に用いたが、開発者の数は不足しており、加えて新規のゲームエンジンという事もあって、想定されたゲーム内システムを実装出来ないという状況が頻発したという。

 そして2019年にANTHEMが出た際には、同作の目指していた戦利品獲得要素の強いシューティングゲーム、すなわち「ルートシューター」というジャンルは世に広く出ていたのである。海外ゲームに親しい読者の方ならば、「The Division 2」「Destiny 2」「Warframe」というタイトルはご存知だろう。それぞれが円熟している時期に、新規の競合サービスとしてやり合わなければならないというのは想像するだけで顔が真っ青になる難易度の高さだ。ゲーム本体の要求水準とシステムの練り込みの甘さなども相まって、ANTHEMは同社の開発力の低下を大きく示すこととなってしまっていた。同作は2021年にアップデートが撤回され、システムが未成熟のまま2026年にサービスを終了することとなった。

 今回発表された内容の中には「新規のMass Effect」に関する開発も凍結されると記載されており、同シリーズの今後も絶望的な状況となってしまっている。

EAの方針と逆風

 株主であるElectronic Artsは「Building EA’s Next Chapter」と題されたプレスリリースを10月22日付けで発表している。この中で同社は「Battlefield6」の成功、「Apex Legends」に対する更なる投資、そしてアイアンマンやスター・ウォーズブランドの新作ゲーム開発に注力していると記載されている。

 他のゲームジャンルについてだが、「EA SPORTS FC 27」をはじめとしたスポーツゲームも同様に扱う見込みだ。ライフスタイル系ゲームとしては「The Sims」と共に「Skate.」も長期的なゲームブランド継続に向けて力を入れていくとしている。

 一方で、BioWareが多くのIPを制作していながらも開発競争において劣勢であり、今回閉鎖の判断を下した事に対するユーザーからの不満の声もあがっている。特に傘下の開発企業を多く抱えながらも閉鎖を次々と行い、結果的にブランドを多数死蔵させているElectronic Artsの方針については不評一色である。

 ゲーム業界についてはUbisoft(ユービーアイソフト)のレイオフやスタジオ再編など、海外において事業縮小の話が多く飛び交う状況だ。愛されたブランドが消える事は悲しく、また功利主義的な姿勢が行き過ぎれば、ゲーム産業そのものの縮小にも繋がりかねない。今後の業界動向を注視する必要は大いにあるだろう。

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