SNSが普及した昨今において、国内・海外を問わず、いわゆる「2次元作品」に親しむユーザーが増えつつある。そしてそれと比例するかのように、そういった文化を否定する声が一部で挙がっている。こういった活動は2000年代のネット普及後より徐々に見られるようになっていったものだが、特にここ最近では俗に言う「ポリコレ的表現」と揶揄されるような、表現全体に規制をかけようとする動きが強まっていた。
そんな情勢下で、最近SNS上にて二つの創作系サービスに大きな懸念が持ち上がっている。会員制ファンクラブサイト「Pixiv Fanbox」と、イラスト製作ツール「CLIP STUDIO PAINT」である。
突然の素材削除のCLIP STUDIO ASSETS
CLIP STUDIO PAINTでは、CLIP STUDIO ASSETSというアセット(素材)をまとめたサイトが存在する。ここにはペンの形状や背景など様々なアセットが公開されており、ここのアセットデータを使用してイラストに反映している作者は相当数存在する。
ところが先日、同社は大量のアセットを非公開にするという対応を行った。それと前後する形で2026年9月22日に次のようなツイートを公開している。
CLIP STUDIO ASSETSでは、投稿および行動ガイドラインにそって投稿素材の公開状態を運営で変更する場合があります。
管理者による削除や未公開状態に変更となった場合でも、違反素材として削除されない限り、権利関係などの問題はありません。
今回のアセット非公開化は運営の判断によるものであり、その判断基準については不明瞭なままであった。
さらに事態が動いたのは9月25日。今度は「非公開素材の再公開について」というタイトルでポストを行っている。内容の一部を以下に抜粋しておこう。
判定に誤りがあったのは、確認作業の運用や手順に不十分な点があったことが一因であり、この点については既に運用を見直しております。また、素材の確認作業については、従来よりAIによる判定は行っておりません。なお、素材そのものに問題がない場合でも、サムネイル、素材の説明文や説明画像、タグなどの掲載情報が確認の対象となったケースがございます。
(中略)
CLIP STUDIO PAINTには、作品内容を判定し、それに応じて描画や制作を制限する仕組みはありません。今後も、ユーザーの創作内容を監視・判定し、表現を制限する仕組みを導入することはありません。
現状に対する説明は行っているものの、肝心の非公開化基準については相変わらずユーザー側に知らされていない状態だ。ユーザー間では「海外ユーザーが割合として多いため、海外に沿った基準を設けたのではないか」「英国の団体と接触したからではないか」と、不確定な情報が今も飛び交っている状況だ。とはいえ現状非公開化に対する懸念は全く払拭されておらず、信頼回復が急務となっている。
突然のキーワード検閲が入った可能性ありのPixiv Fanbox
もう一つはPixivが運営するファンクラブサイト「Pixiv Fanbox」だ。これは捉え方によってはより深刻な事態となっている。幾つかのツイートを以下に掲載するが、その非公開化基準がどうにも「機械的すぎる」状況である。
状況が状況であるため未確定ではあるが、文中の語句に対する過剰な反応、そしてそれに対する一律の非公開化対応が今回の騒動の原因となっていると見られている。「ロリ」という言葉に反応する場合、ロリータなどの言葉以外にも「カロリング朝」「ねんねんころり」「ロリータポルノ爆弾」などが駄目になってしまう。なおドラゴンボールシリーズに登場する「ブロリー」ももれなく対象となる可能性が高い。ダニィ!?
このPixiv Fanboxについても不確定な噂が飛び交っているが、規制を受けたユーザーからの報告では「決済会社の指摘により」という文言が明記されているのだという。今回のCLIP STUDIO PAINT関連の騒動とのタイミングの近さから、この辺りで何か大きな動きがあったのではと疑問の声が挙がっている。
「2次元に優しい」決済事業者はいるのか
最近発生した同様の事例では、同人販売事業を営む「メロンブックス」におけるVISAカードの取り扱い停止、ならびに動画配信サイト「ニコニコ動画」におけるVISA・Mastercardの決済停止とその再開などが挙げられる。
これらの事案に共通する事として、海外でサービスを展開している決済事業者やそれを取り巻く一連の決済サービスが「直接自社が運営していない他社のサービスの命脈を握っている」という点が見えてくる。クレジットカードはあくまで決済手段の一つでしかなく、更にカードのブランドはその中の事業者の種類に過ぎないからである。
現状多くの料金制サイトがこの決済手段を通すために「綺麗にする」ことを強いられている状況である。ニコニコ動画においてはVISA等の決済事業者の利用再開を進めるべく、相当数のコンテンツを削除した上でようやく決済再開となったという話である。いわば「決済事業者の『よく分からない顔色』を伺う」ことが絶対条件になってしまっているのだ。
これに対する対抗馬として担がれているのが、カードブランド「JCB」だ。日本発の国際カードブランドであり海外でも通用する効力を持ち、各種オンライン決済はもちろん同人・二次元系のサイトやサービスでも利用可能としているところは非常に多い。現状ここがいわば聖域のような扱いで、この手のコンテンツに関わる人々の注目を集めているのである。
もちろんJCBの方針が「そういうコンテンツはダメです、取引を行いません」となれば話は別だが、現状の決済事業者によるコンテンツ検閲のような動きに対して、消費者側は「決済事業者による越権行為」と見做している動きも強い。規模こそ他のブランドには敵わないだろうが、サービスの利用に対し不安感を抱かせない事業者というのは消費者にとってありがたがられるものである。今後の事業規模拡大と、コンテンツの決済における健全化を進めることは、もはや待ったなしの状況ではないだろうか。
