生成AIの使用は「どこまでOK」か CESAアンケートとVRChatに見るユーザーからの温度感

 昨今AIによる様々なサポートが当たり前のように提供されている。簡単な文章の校正から複雑なプログラミング、道案内に今夜の献立、デートプラン、果ては画像や音声、動画や3Dモデルの作成、ゲームに至るまで多岐にわたる。ある種生活の中で「当たり前」になりつつあるAIの活用だが、創作においては大きな向かい風に晒されている。そんなAIを巡る興味深い動きについて、この記事では追いかけてみよう。

ゲーム業界に見るAI利用の行方

 東京ゲームショウ2026と前後する期間に、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(以下、CESAと表記)がとあるレポート結果を発表した。速報版ではあるが、「CESAゲーム産業レポート2026 プレビュー版」の内容を簡単にかいつまむと「業務におけるAI利用は全体の7割」「生成AIの利用は8割」に及ぶというものである。

 ただしこの数字は、2026年6月時点のCESA会員企業220に対し、設問への有効回答数が48社と会員企業の4分の1弱の回答でしかなく、加えてCESA非会員の企業も対象にした場合はまた違った傾向が見えてくる可能性は否定できない。

 そしてゲームクリエイションの場面で生成AIを活用する事については、既にマイナスのイメージが付いた事例が2つ存在する。

 一つは昨年発表されたGame of the Year(GOTY)において、RPG作品「Clair Obscur: Expedition 33」が「Indie Game Awards 2025」へとノミネートされた際に起きた事例だ。この作品はノミネート後に受賞も果たしたが、すぐにそれが剥奪されてしまったのである。過去に公開したバージョンにて、テクスチャ内に生成AIの使用が確認され、それがノミネートの除外要項に引っかかってしまったのである。なお、同作に関しては「生成AIを使用していない」と表明した後にこの事実が発覚したため、ゲーマー達からの心象を悪くしてしまっている。

 もう一つはゲーム制作会社レベルファイブのオンライン発表会「LEVEL5 VISION 2026 II 夢」にて、映像内に生成AIを使用した演出やシーンが多用された事例だ。まずはこちらの映像を見てほしい。

 同社は以前より制作体制について生成AIの使用を積極的に推し進めて来ているのだが、実際のところ製品のクオリティに関し消費者が期待するレベルに届いていないという意見が発表後に相次いだ。これを受けて同社はプレスリリースを発表。人的エラーだとしつつ、今後はクオリティのブラッシュアップに努めていくとしている。

 だが現状、同社の抱える開発中のゲームは多く、そしてリリースを心待ちにしているユーザーがいるなかで、生成AIを使用した「クオリティが保証できない映像」を見たユーザーからは不満の声が出た形である。生成AIによる効率化を優先するのであれば、同社の抱えているソフトのローンチを何故早められないのか、質を保証出来ないのかというのはもっともである。

VRChatにおける「No AI」とフェアユースに対する批判

 一方でユーザーが制作したコンテンツ、いわゆる「UGC(User Generated Contents)」が主流のタイトルにも、生成AIとそれに反発する流れが生まれている。ここ数日で発生した「No AI」というムーブメントだ。

 ここ最近、生成AIによるプログラミングを元にワールド(遊ぶ為の空間)を作成する流れが増えている。そういったツールで作成されたワールドの中には、お世辞にも「遊ぶには向かない」クオリティのワールドが存在する。もちろん、そういったワールドが存在すること自体はVRChatではよくあることであるし、ワールドの品質の高低自体は何の問題もない。

 通常であればワールドに付属するサムネイル(イメージ画像)でどういったワールドなのか、クオリティの高低をある程度判断することが出来るのだが、そのサムネイルの設定も問題になっている。サムネイル画像を「生成AIによる綺麗なワールドのイメージ」にしたうえで、実際にアクセス出来るワールドはサムネイルとは似ても似つかない程に低クオリティなものになっているという事例が相次いでいるのだ。また、VRChat公式側もワールドを取り上げて紹介する際に、生成AIを用いて作成されたワールドをその中に含めている。

 それに反発するユーザーが「No AI」の声を挙げ、ワールドのサムネイルにピンク色の帯を追加。賛同するクリエイターが自分の作り上げたワールドに、生成AI反対の帯を追加しているという流れである。いわゆる「AI Slop(AIを用いた低品質なコンテンツ)」の氾濫に対する反動だ。

 ただし注意しなければならないのは「No AI」といっても一口に「生成AIに全面反対」という訳では無いグラデーションがあることだ。コーディングから手打ちで行う必要があるのか、作業の最適化にAIを頼る事は問題ないのか、ワールド内の翻訳などはどうなのかと、その線引きの基準を挙げればキリがないのである。

 そこでVRChat公式はユーザーに対してアンケートを実施。リンク先は日本語のアンケートフォームだが、その中でいわゆる「サムネイル詐欺」なワールドを認めないという表記をクリエイターガイドラインに追記した事を発表している。

 VRChat公式が発表している基準値としてはこういったものになるが、それでも現状どこまでAIの活用を認めるかについては議論が行われている最中だ。またこの話題に付随して「AIの有無を問題にする以上に、海外では版権作品からのデータをリッピングし、アバターとして使用している事例がある。それについての対処をまずは行うべきではないか」という声もあり、AI反対の声が必ずしも創作の「清廉潔白さ」を保証しないという見方もされている。

生成AIにおける問題点

 製作においては有効なツールとなるかもしれない生成AIだが、それに対する反発の声があるのも事実である。それはどういった点に集約されるのかといえば、大きく分けて2つだ。

 1つは「プログラミングをAIに任せた場合、エラーを起こした箇所を製作者が修正出来るのか」という点だ。特に知識がないままに製作を行った場合、仮にエラーが発生し本来の意図するところではない挙動が発生した際に、適切な対処が行えない可能性が出てくるのである。

 2つ目は「生成AIを用いて生成した著作物について、法的なクリーンさが保証できない」という点だ。画像生成AIをはじめ、作曲系AIでもこの様な傾向が問題視されるが、学習元として使用しているデータが「自身の著作物のみである」という保証が出来ないのである。世に出ているAI産の制作物は、現状では学習元のデータに対し許諾を得ずに学習材料とし、それを出力しているケースが散見される。これを用いる事のリスクを考えれば、一からきちんと創作したものの方がはるかに「安全」だ。

 最終的に、コンテンツを享受するプレイヤーに対して、制作物のクオリティが保証され、またサポートが十分なのかというところで大きく疑問が残る状況に変わりはない。「公開されたコンテンツで遊んでいたら著作権違反で訴えられました」などとなってしまっては、本末転倒である。商行為においては既に生成AIに対して「NG」を付きつける流れも出来ており、AI利用から撤退する動きも出ている。

 それでも作業の手助けを行うツールとして、一定の有用性があるところもまた事実である。この点においていかに透明性を保ち続けられるのか、消費者側が「問題ない」と判断するところにまで落とし込めるのかが利用者側の今後の課題となるだろう。

 果たして制作においてAIを利用するのが本当に「効果的」なのか。今一度その影響力を、長期的な目線で見直してみる時期に来ているのかもしれない。

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