2026年9月17日から20日にかけて、千葉県千葉市の展示会場である幕張メッセにて「東京ゲームショウ2026」が開催された。そこにゲームエンジン「Godot(ゴドー)」の運営支援を行うGodot Foundation 理事 Aurélien Condomines(オレリアン・コンドミーヌ)氏が来訪。本記事ではイベントに参加中の同氏へのインタビュー、ならびに提携を発表しているCRI・ミドルウェア株式会社の紹介を行う。
「全てはユーザーのためにゲームエンジンを提供する」Godotの飽くなき姿勢
ゲームエンジン「Godot」は主にゲームの製作に使われるプログラム「ゲームエンジン」の一つである。詳しくない方向けに説明を差し挟むと、昨今話題になっているUnreal Engine(アンリアルエンジン)やUnity(ユニティ)と同じく「ゲームを製作・動作させるのに必要な機能が揃った工具箱」という認識が近しいものだろう。
そんなゲームエンジンの一つGodotの特徴は、無料で提供されているオープンソースソフトウェアであるという点だ。先に挙げたゲームエンジンは、本格的にゲームを製作するならば有償の機能は避けて通れないものとなっている。しかしGodotは利用料が一切発生しない完全無料のソフトウェアであるため、ゲームを作ってみたいと思ったユーザーにとって手に取りやすいソフトウェアなのである。
今回はAurélien氏に、インディーゲームにおけるGodotの好評ぶりと今回のCRI・ミドルウェアとの提携について話を伺うことが出来た。

―先のインディーゲームイベント「GMTK Game Jam 2026」では、インディーゲームにおいてGodotの使用率が非常に高い状況であるという情報がありました。こちらについてどのようにお考えでしょうか。
「まず、ゲームデベロッパーの皆さんがGodotを愛してくれている事にとても感謝しています。我々はGodot使用時にロゴを表示したり、あるいはライセンスの表記を行うことを定めていないため、実際どれだけの方に使っていただいているか、正確なところはわからなかったのです。マーケティングなども一切行っていないので、まさしく口コミで広まったと言えるでしょう」
―Game Developers Conference(GDC、ゲーム開発者会議)の2025年時点の調査「STATE of the GAME INDUSTRY」によると、Godotの使用率は4%でした。現在も大規模開発環境において、Godotの使用率は少しずつ伸びています。今後、こういった層に向けてアプローチはされる予定でしょうか。
「大規模開発において、ゲームエンジンを提供する側というのは苦労する事になります。『こういった仕様が欲しい、ああいった動作をしてほしい』といったオーダーを、ゲーム開発側から指示されるというパターンが多いからです。そうなると、我々としては規模や人員の都合も含めて対応する事が出来ません。ですので、我々はあくまで『ゲームエンジンを作るから、後のカスタマイズは利用者が行う』という方針を維持するつもりです」
「また、Godotの特徴として、スマートフォンでも動作する程にゲームエンジンとして『軽い』ことが挙げられます。そのため、ゲーム開発のテスト環境に使っていただいているという事例については見聞きしております。その点については、我々はとても嬉しく思っています」
―今回CRI・ミドルウェアと提携を行われた理由について、お聞かせください。
「私たちはゲームエンジンの開発を行っていますが、それ以外の面、特にサポート体制においてはある種の偏りが生じていました。私たちは英語やフランス語は堪能ですが、日本語でのサポート対応は困難だったのです。今回CRI・ミドルウェアと提携することで、今まで弱かった日本語のサポートをカバーしてくれる形となり、日本の利用者に対してより細やかな対応をすることが可能となりました」
ここでCRI・ミドルウェア側からも担当者から補足が入る。
「我々(CRI・ミドルウェア)は大小さまざまな規模のゲーム開発で使用されるミドルウェアでありますが、その本質はゲームの開発であると考えています。日本の開発者はまだオープンソースのゲームエンジンに慣れていないかもしれませんが、CRIWAREがGodotに対応していくことで、多くの開発者に向けてより良いゲーム開発環境の構築を後押しできるようになったというのは、我々にとっても喜ばしいことです」
―最後に、日本のGodotユーザーに対してメッセージをお願い致します。
「Godotは常にユーザーからのフィードバックによって支えられています。そして日本語でのサポート体制の円滑化も進めていきますので、今後は今まで以上に日本の皆さんからも要望を送っていただきたいです。開発者が独力で問題を解決しようとするよりも、それを一度私たちに共有いただくことで、より良い解決策が提示出来ると思っています。ぜひ一緒に良いゲームを作り上げていきましょう!」
―ありがとうございました。
なお、インタビュー中Aurélien氏が着ていたシャツには「ハイジがくれたもの 大自然アルプスに暮らす」という日本語が描かれており、あわせてGodotの公式マスコット「Gobot(ゴボット)」が兜を被った状態で登場していた。というのも10月1日に「Godot Meetup Tokyo Vol.8」というイベントの開催がCRI・ミドルウェアのセミナーオフィスにて予定されている他、「GodotCon Tokyo」というコンベンションイベントが12月4日に開催予定となっている。そのための日本語シャツであり、兜を被ったGobotがいるのだとか。
実は色々なゲームに関わっている、CRI・ミドルウェア
さて、今回提携を発表したCRI・ミドルウェアについて、ゲームに詳しい読者であれば「あっ、あの会社だ!」と気づく方もいるだろう。ゲーム起動後のメーカーロゴ表示などで見える、青と白の四角形などの模様が特徴的なあの企業だ。

CRI・ミドルウェアはゲーム開発を支える様々なソフトウェアを提供しているが、ソフトウェアであるがゆえに「どういうゲームに使われているの?」というところはあまり見えてこないものである。そこで今回は会場展示のソフトを一つ取り上げ、その利用先を紹介しよう。


こちらは2Dアニメーションの製作・管理を行う「OPTPiX SpriteStudio」というソフトウェアだ。昨今では広く認知されているLive2Dの様なアニメーションを作れたり、また2Dイラストを変形させ擬似的な奥行き表現を付与したりと、2D素材を余すところ無く活用出来るアニメーション製作ソフトだ。

今回提携を発表したGodotでも使えるこのソフト、様々なゲームに使われているが、実はとある大型タイトルにも使用されているのである。ド派手な2Dアニメーションでところ狭しとロボット達が動き回るタイトル「スーパーロボット大戦シリーズ」が利用先だ。
もう一度お伝えする。あの「スーパーロボット大戦シリーズ」である。
シリーズをプレイしている方は既に耳タコどころではないが、あの滅茶苦茶に派手かつ精細なアニメーションを支えているのがこのソフトなのである。そしてこれがGodotでも使えてしまうのだ。もちろんソフト自体はいろいろなカスタマイズが施された上で製作に利用されているとはいえ、スーパーロボット大戦シリーズの肝の一つは、様々なゲーム・アニメーション作品の演出を盛大に再現しブラッシュアップしている演出の凄まじさである。これを十全に支えているソフトとなれば、その性能は言うまでもなく極上だろう。
その他サウンド向けソフトウェアやインターフェース向けソフトウェアなど様々なソフトを提供するCRI・ミドルウェアは、近年では自動車におけるインターフェースの設計など、ゲーム外の領域でもその存在感を増している状況だ。Godotにおいてもゲーム開発以外のシミュレーション用途で用いられるケースがあるとされており、これまでの「ゲームエンジンやソフトウェアはゲームのためのもの」というイメージは塗り替えられつつある。ゲームというエンタメ領域はもちろんのことだが、私たちの身の回りのアレコレも、こういった企業や団体の製品が「縁の下の力持ち」として支えてくれているのである。
